予備試験の難易度・合格率推移~6項目で偏差値判定
法律系国家試験の最高峰と言われている「司法試験」のチャレンジ資格を得るための試験が「予備試験」です。
その仕組み上、”若手エリート選抜試験”とも言われています。
司法試験を受験するためには⓵法科大学院修了⓶予備試験合格の2つの内のどちらかの条件を満たす必要があります。
このページの合格者データでも掲載されていますが、現役大学生と現役大学院生の受験者が多いのが特徴的になります。
アスリートで言えばキャリアハイと言われている時期に受験されている人が多いので大変レベルの高い試験になっています。
今回は6項目から予備試験の難易度・偏差値を総合判定していきたいと思います。合格率、受験者偏差値、勉強時間、他資格との比較など様々な根拠のあるデータで難易度を算出していますので、どうぞ1つの目安にして頂ければと思います。
受験者数・合格者数・合格率推移
短答式合格率推移
年度 | 受験者 | 合格者 | 合格点(合計) | 合格者平均点 | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|
2018年 | 11,136人 | 2,661人 | 160点以上 | 177.7点 | 23.8% |
2017年 | 10,743人 | 2,299人 | 160点以上 | 174.9点 | 21.3% |
2016年 | 10,442人 | 2,426人 | 165点以上 | 181.5点 | 23.2% |
2015年 | 10,334人 | 2,294人 | 170点以上 | 187.5点 | 22.2% |
短答式試験は20%~25%程度の合格率で推移しています。4人に1人、5人に1人程度が合格することができる試験と言えます。
短答式試験の受験者の中には勉強をスタートして1ヶ月~3ヶ月程度の”お試し受験”の割合も一定数いますし、実際に勉強を開始して3ヶ月程度で合格している人もいます。
日本屈指の超エリート集団の中での合格率20%は決して簡単ではないでしょう。しかし、短答式試験レベルであれば法律初学者でも1年~2年シッカリと勉強すれば十分に合格を勝ち取ることができます。
論文式試験合格率推移
年度 | 受験者 | 合格者 | 合格点 | 論文式合格率 | 対短答式合格率 |
---|---|---|---|---|---|
2018年 | 2,551人 | 459人 | 240点以上 | 17.99% | 4.12% |
2017年 | 2,200人 | 469人 | 245点以上 | 21.31% | 4.36% |
2016年 | 2,327人 | 429人 | 245点以上 | 18.43% | 4.1% |
2015年 | 2,209人 | 428人 | 235点以上 | 19.38% | 4.14% |
論文式試験の合格率は約20%程度ですので、短答式試験と合格率が同じくらいです。
但し、絶対的に違うのは論文式試験の受験者は短答式試験に合格している受験勉強のプロである猛者という点です。
短答式試験と比較して圧倒的に受験生1人一人のレベルが高くなっていますので、相当な難易度になります。実際に論文式試験に何度も落ちて躓いている受験生は多いです。論文式を乗り越えることができるか?それが予備試験の最重要課題になります。
口述合格率&最終合格率推移
年度 | 受験者 | 合格者 | 合格点 | 口述合格率 | 最終合格率 |
---|---|---|---|---|---|
2018年 | 459人 | 433人 | 119点以上 | 94.3% | 3.8% |
2017年 | 469人 | 444人 | 119点以上 | 94.6% | 4.1% |
2016年 | 429人 | 405人 | 119点以上 | 94.4% | 3.8% |
2015年 | 428人 | 394人 | 119点以上 | 92.1% | 3.8% |
口述試験は「誰でも合格できる。」、「あって、ないような試験。」など安易に考えている意見もチラホラ見られますが、シッカリと対策をしないと痛い目に合います。間違っても”ノー勉”で試験に臨むのは絶対に辞めるべきです。
確かに合格率は約95%程度ですので、100人受けて5人くらいしか落ちません。ただ、先ほども同じような話しをしましたが、口述試験の受験生は難しいと言われている短答式試験、超超難しいと言われている論文式試験を突破した秀才たちです。
そんな彼等の中から100人中5人が不合格になることを考えると決して油断することはできないはずです。
男女別の合格率推移
年度 | 男性合格者数 | 男性合格率 | 女性合格者数 | 女性合格率 |
---|---|---|---|---|
2016年 | 334人 | 4.0% | 71人 | 3.3% |
2015年 | 354人 | 4.3% | 40人 | 1.9% |
2014年 | 319人 | 3.8% | 37人 | 1.8% |
2013年 | 307人 | 4.1% | 44人 | 2.7% |
2012年 | 197人 | 3.3% | 22人 | 1.9% |
予備試験は男性の方が1.5倍~2.0倍くらい合格率が高い傾向があります。問題の性質上、男性脳の方が受験に有利なようです。
受験者数も男性の方が圧倒的に多いので、合格者数も8倍くらい男性の方が多いです。
今後も男性・女性の合格率の差については検証していきたいと思います。
合格者の最終学歴
※平成30年司法試験最終学歴別合格者一覧(予備合格者)
最終学歴 | 合格者数 | 割合 |
---|---|---|
大学1年 | 0人 | 0% |
大学2年 | 4人 | 1.2% |
大学3年 | 24人 | 7.1% |
大学4年 | 84人 | 25% |
大学卒業 | 65人 | 19.3% |
大学中退 | 5人 | 1.5% |
法科大学院2年 | 97人 | 28.9% |
法科大学院3年 | 9人 | 2.7% |
法科大学院修了 | 36人 | 10.7% |
法科大学院中退 | 3人 | 0.9% |
法科大学院以外在学 | 1人 | 0.3% |
法科大学院以外修了 | 5人 | 1.5% |
高校在学 | 1人 | 0.3% |
高校卒業 | 1人 | 0.3% |
現役大学生+現役法科大学院生で合格者の60%以上を占めます。
現役大学生の場合は大学1年生~2年生くらいに勉強を開始して、大学2~3年に予備試験合格、大学4年生で司法試験合格を目指す事例が多いです。
現役法科大学院生の場合は大学4年までに予備試験合格出来ずに進学をして、法科大学院1年で予備試験合格、2年で司法試験合格されているケースが多いのが特徴的になります。法科大学院に入学された方でも予備試験ルートから司法試験合格されていることが分かります。
恐るべきなのが高校在学中に司法試験に合格されている人がいる点です。そしてもう1つ衝撃的なのが高卒で合格されている方が1年に1人くらいしかいないことです。法学部で勉強されている学生に比べて法律初心者から合格を目指すハードルの高さが伺えます。
出身大学別合格者数/合格率ランキング
※平成30年司法試験予備試験受験状況(大学別・全体)
※()内は合格率の順位です。
⓵受験者数100人以上⓶最終合格者2名以上の条件を満たした大学でランキングを作成しています。
順位 | 大学名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
1位(1位) | 東京大学 | 644人 | 52人 | 8.1% |
2位(5位) | 慶應義塾大学 | 652人 | 44人 | 6.7% |
3位(7位) | 中央大学 | 945人 | 27人 | 2.9% |
4位(8位) | 早稲田大学 | 706人 | 20人 | 2.8% |
5位(4位) | 京都大学 | 251人 | 17人 | 6.8% |
6位(2位) | 一橋大学 | 178人 | 14人 | 7.9% |
7位(3位) | 大阪大学 | 156人 | 12人 | 7.7% |
8位(9位) | 同志社大学 | 217人 | 6人 | 2.8% |
9位(6位) | 北海道大学 | 112人 | 5人 | 4.5% |
10位(11位) | 明治大学 | 288人 | 4人 | 1.4% |
11位(10位) | 法政大学 | 149人 | 2人 | 1.3% |
予備試験より東京大学入試の方が難しいという意見もありますが、それについては真っ向から否定させてもらいます。
上記の出身大学別合格者データを見ると東京大出身者の合格率は1位です。流石東大としか言いようがないのですが、それでも合格率は約8%で100人受験して92人は不合格になっています。
東大生が10人受けて1合格できるかどうかですので、どう考えても東大入試より予備試験の方が難易度は高いです。
また、予備試験はマーチ(MARCH)レベルの偏差値でも合格するのは難しくはないという意見もあります。
確かに中央大学は法律系に強く、合格者数も堂々の3位です。しかし、合格率は2.9%とほとんどの中央大学出身者は落ちています。明治大学の合格率は1.4%、法政大学の合格率は1.3%ですので、合格者は出ていることは間違えないのですが、実際にはマーチ出身者が100名受けて合格者は1~2名程度です。それを考えるとマーチレベルの大学出身者が合格した場合は”快挙”と言えるのではないでしょうか。
早稲田大学は難関国家資格に強いと知られていますが、予備試験に関しては圧倒的に慶應義塾大学の方が上です。
例年の合格者データを見ると東京大学、慶應義塾大学、京都大学、一橋大学、大阪大学が安定した結果を残しています。
職種別の合格率
※平成27年度「司法試験予備試験職種別人員数」
職種 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
大学生 | 2,875人 | 156人 | 5.4% |
法科大学院生 | 1,710人 | 137人 | 8.0% |
無職 | 2,233人 | 35人 | 1.6% |
会社員 | 1,593人 | 28人 | 1.8% |
公務員 | 736人 | 14人 | 1.9% |
自営業 | 378人 | 7人 | 1.9% |
法律事務所 | 189人 | 2人 | 1.1% |
塾教師 | 128人 | 2人 | 1.6% |
教職員 | 68人 | 1人 | 1.5% |
法科以外大学院生 | 25人 | 1人 | 4.0% |
その他 | 399人 | 11人 | 2.8% |
他の職種と比較すると圧倒的に大学生・法科大学院生の合格率が高いです。
意外なのは時間が有り余っている無職よりも会社員、公務員、自営業の働きながら受験されている人の方が合格率が若干高い点です。
上記のデータから現役学生に有利な試験と言えるでしょう。
科目別の難易度&勉強時間ランキング
※難易度ランクはSS~Dに分類にしています。
※SS=超難関、S=凄く難しい、A=難しい、B=普通、C=易しい、D=凄く易しい
順位 | 科目 | 勉強時間 | 難易度ランク |
---|---|---|---|
1位 | 民法 | 1,600時間 | SS |
2位 | 刑法 | 1,200時間 | S |
3位 | 民事訴訟法 | 1,000時間 | S |
4位 | 刑事訴訟法 | 800時間 | A |
5位 | 憲法 | 800時間 | A |
6位 | 商法 | 600時間 | B |
7位 | 行政法 | 400時間 | C |
8位 | 一般教養 | 100時間 | D |
一番攻略に時間が掛かるのは民法ですね。予備試験合格者の中には民法だけで2,000時間~3,000時間勉強したという人もいます。
予備試験民法科目の難易度がSSランクなのは間違えないでしょう。刑法についてもSランク判定にしました。
予備試験は1つ一つの科目の難しさが他の資格試験とレベルが違います。予備試験の中では比較的やさしいと言われている行政法で宅建士試験に合格するくらいの時間が掛かりますし、商法については行政書士合格と同等レベルの難易度になります。
一般教養試験(人文化学・社会科学・自然科学)については出題範囲が広く、捨て科目にしている受験生が多いことからDランクにしました。
現役学生の場合は大学受験と問題が被るので、ノー勉で高得点を取っているケースも多いです。
大学受験の経験が無い高卒・中卒者が教養試験で8~9割の得点を取るとなると民法以上のSSS難易度になります。勉強時間に換算して2,000時間~3,000時間は覚悟しないといけないので、一般教養は捨てて法律科目の注力するのが得策とされています。
合格者の平均勉強時間/期間目安
法律を全くのゼロから学ぶ場合の勉強時間目安です。
法学部出身者など学習経験者の場合はレベルに応じて必要な勉強時間は異なります。
予備校利用の場合
5,000時間/3年~4年
予備校の利用の場合で法学部出身者であれば最短1,500時間で合格することも可能です。
但し、全くの法律初心者から勉強するとなると平均で5,000時間くらいは掛かります。短答式であれば一発合格することも可能ですが、最終合格となると早くても2年~3年は掛かると思っておいた方が良いでしょう。
独学の場合
8,000時間/5年~6年
法律初心者+独学で合格している方は1年に数名程度、もしくは0名というケースも考えられます。
それくらい難易度が高いですし、勉強時間も掛かります。よほど勉強が得意な方でない限りは独学で合格するのはほぼ無理と考えておいた方が良いでしょう。東京大学法学部出身者でも独学で合格する事例は少ないです。
予備試験VS他資格と難易度を比較
78 | 司法試験 |
---|---|
77 | 予備試験 |
70 | 公認会計士 |
69 | 不動産鑑定士 |
68 | 弁理士 |
67 | 司法書士 |
66 | 税理士 |
60 | 土地家屋調査士/一級建築士 |
59 | 中小企業診断士 |
57 | 社会保険労務士/測量士 |
56 | 行政書士/二級建築士/測量士補 |
55 | マンション管理士 |
54 | 宅建士 |
他の資格に比べて圧倒的な偏差値レベルになります。
公認会計士の方が難易度が高いという意見もありますが、受験生の1人一人のレベルは圧倒的に予備試験の方が高いですし、受験専念組が多いことから予備試験の方が2段階くらい難しいと判定させて頂きました。
不動産鑑定士、弁理士、税理士なども確かに難しい試験ではありますが、予備試験に比べると易しいレベルです。
予備試験VS司法書士~難易度比較
比較項目 | 予備試験 | 司法書士 |
---|---|---|
合格率 | 3.8% | 4.3% |
受験生の偏差値 | SSS | A |
受験生の学習環境 | 専業受験が中心 | 兼業受験が中心 |
勉強時間(予備校) | 5,000時間 | 3,800時間 |
勉強時間(独学) | 8,000時間 | 7,000時間 |
総合判定 | 偏差値77(SS評価) | 偏差値67(A評価) |
弁護士になるか、司法書士になるか?で迷っている方は多いと思いますので、参考になればと思い比較表を作成してみました。
まず、合格率ですが、こちらについては同等程度です。どちらも狭き門であることが分かりますね。
続いて、予備試験と司法書士の難易度を比較した時に大きな差が出るのが受験生の偏差値レベルです。
予備試験の合格者の中心になるのが東京大学出身者です。続いて慶應義塾大学、中央大学、早稲田大学、京都大学、一橋大学、大阪大学など上位国立大学が中心になります。
司法書士の合格者は早稲田大学、明治大学、同志社大学、中央大学、慶應義塾大学、日本大学、立教大学、関西学院大学、立命館大学など国立大学出身者は少なく、私立大学出身者が多いのが特徴的になります。
既にお気づきの方もいると思います。最上位の学力を持つ天才学生は予備試験→司法試験を目指し、勉強は得意だけど、そこまで自信の無い方は司法書士を目指すのです。
また、予備試験は現役学生の受験生の中心なのに対して、司法書士は社会人が中心になりますので、勉強環境という意味でも劣ります。
同じくらいの難易度という意見もありますが、圧倒的に予備試験の方が難しい試験と言えます。
予備試験VS行政書士~難易度比較
比較項目 | 予備試験 | 行政書士 |
---|---|---|
合格率 | 3.8% | 12.7% |
受験生の偏差値 | SSS | C |
受験生の学習環境 | 専業受験が中心 | 兼業受験が中心 |
勉強時間(予備校) | 5,000時間 | 400時間 |
勉強時間(独学) | 8,000時間 | 600時間 |
総合判定 | 偏差値77(SS評価) | 偏差値56(B評価) |
どちらが難易度が高いか?については既に説明する必要はないでしょう。
合格率、受験生レベル、学習環境、平均勉強時間など全てにおいて予備試験が行政書士を圧倒的に上回っています。
行政書士試験合格後にステップアップで予備試験にチャレンジしようと思っている方も結構多いと思いますが、試験科目は若干被りますが、問題の性質が全然違うので生半端な覚悟で挑むのはおすすめできません。
予備試験の難易度・偏差値を総合判定!
※SSSランク~Fランクで分けています。SSSランクが最難関です。
項目 | 難易度判定 |
---|---|
合格率 | SS評価 |
受験生の偏差値 | SSS評価 |
受験生の学習環境 | SS評価 |
平均勉強時間 | SS評価 |
受験者の口コミ | S評価 |
管理人分析 | SSS評価 |
総合判定 | 偏差値77(SS評価) |
1つ一つの項目を入念に検証した結果、偏差値77(SSランク)と判定しました。中途半端な努力では絶対に合格することはできません。数年間は勉強に捧げる覚悟で臨んでください!