社会保険労務士の勉強時間とは?科目別難易度から検証
社労士試験は「学歴」、「資格」、「職歴」のいずれかの受験資格を満たす必要がありますので、受験する前に1つの足切りが実施されています。受験生の学歴は大卒・院卒が中心ですし、行政書士・司法書士など難関資格を保有されている方もいますので、全体的に難易度の高い試験になっています。
今回は社会保険労務士試験に合格するために必要な勉強時間はどのくらい?という疑問に答えていきたいと思います。
試験科目別の難易度や勉強時間、過去の合格率推移なども掲載していますので、最後までチェックしてください。
合格者の平均勉強時間/期間目安
学習環境によって合格するために必要な勉強時間・学習期間は異なります。
短期合格を目指すのであれば「予備校」。コストパフォーマンス重視であれば「独学」ですね。
概ね学習の効率性で1.5倍程度の差があります。
但し、既に社会保険に関する知識が豊富にあったり、実務経験があって勉強が得意であれば独学でも6ヶ月程度で合格することも可能です。
あとは1日に8時間くらい勉強できる環境であれば多少で効率性の悪い学習をしていても、独学で一発合格を狙えます。
働きながらの社会人組で独学はおすすめできません。通学より通信講座の方が効率性に優れていますので、検討対象に加えておくことをおすすめします。オンライン系であれば10万以下で受講することができますので、思ったより安く抑えることができます。
予備校利用の場合
最短300時間~400時間/2ヶ月~3ヶ月
平均600時間~800時間/半年~1年
毎日12時間くらい勉強できれば最短1ヶ月合格もありえる話しですが、現実的に考えて最速でも2ヶ月~3ヶ月程度は掛かります。
1日2時間~3時間コツコツ勉強するタイプであれば半年以上は必要になります。
独学の場合
最短500時間~600時間/4ヶ月~半年
平均1,000時間~1,200時間/1年~2年
社労士の難易度を考えると基本的には独学はおすすめできません。
通学講座の高い費用を払う必要はないので、オンライン系の格安講座を受講することをおすすめします。
独学で勉強する場合はテキスト/過去問選びが重要になるのと、学習スケジュールをシッカリ作成することがポイントになります。
1,000時間程度の学習は覚悟しておきましょう!根性があれば独学でも合格できます!
科目別の難易度・勉強時間ランキング
科目別難易度の比較表
※難易度ランクはS~Dに分類にしています。
※S=凄く難しい、A=難しい、B=普通、C=易しい、D=凄く易しい
順位・科目 | 選択式 | 択一式 | 勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|---|
1位:労働基準法/労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) | 200時間 | A |
2位:労務管理の一般常識 | 1問(5点) | 5問(5点) | 200時間 | A |
3位:国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) | 150時間 | B |
4位:厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) | 150時間 | B |
5位:健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) | 100時間 | B |
6位:労働者災害補償保険法 | 1問(5点) | 7問(7点) | 50時間 | C |
7位:雇用保険法 | 1問(5点) | 7問(7点) | 50時間 | C |
8位:社会保険一般常識 | 1問(5点) | 5問(5点) | 50時間 | D |
9位:労働保険 | 出題無し | 6問(6点) | 30時間 | D |
合計 | 8問(40点) | 70問(70点) | 約1,000時間 | B(偏差値57) |
社会保険労務士試験の特長としては例年、幅広い範囲でバランス良く出題されています。
得意科目を作るより、苦手科目を作らないことが合格するポイントになります。
宅建試験であれば宅建業法・民法、行政書士試験であれば行政法・民法と注力する科目がありますが、社会保険労務士は特別配点比率の高い科目が無いので、幅広い範囲を勉強する必要があります。
難易度が高いのは労働基準法/労働安全衛生法、労務管理その他の労働に関する一般常識です。
2科目に比べると難易度は少し低くなりますが、国民年金法・厚生年金法・健康保険法についても入念に勉強する必要があります。
労働基準法/労働安全衛生法
働くルールに関する法律問題です。社会人経験がある方であれば馴染み深いと思いますが、学生で仕事をしたことが無い方にとってはイメージしにくい科目です。
範囲については総則、労働契約、賃金、労働時間および休憩/休日、年次有給休暇、年少者および女性について、就業規則などですね。
長文での出題が多い傾向がありますので、条文への理解、判例の理解、文章理解・読解力も問われます。
労働基準法関連については難易度の評価が分かれていますが、トータルで判断すると社労士科目の中で最難関と判定しました。
法改正も頻繁にされていますので、独学で勉強している方は最新の情報をシッカリ拾える環境を作ることが大切です。
間違っても5年前のテキスト・過去問とかは使わないように。
労務管理その他の労働に関する一般常識
「労務管理その他の労働に関する一般常識」と聞くと一体どうゆう問題が出るの?と具体的にイメージしにくい方もいると思います。
例えば・・・男女雇用均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法など社会保険労務士試験の中では最も試験範囲が広い科目になります。また、得点を取るためには様々な知識が必要に問題が出題されますので、難易度が非常に高く、苦戦する受験生が続出しています。
独学で対策するのが難しそうなら、予備校・通信講座を活用するのも1つの手です。
国民年金法
高齢者化社会において国民年金に関する知識の需要は拡大傾向にあります。
国民年金の歴史、国民年金1号・2号・3号に関すること、国民年金の加入脱退、年金に関する問題などの分野から出題されます。
試験範囲はそれほど広くはないので、的を絞って過去問を繰り返し解けば対応可能です。
他の科目に比べると得点比率が高いので、非常に重要な科目であることは意識しておきましょう。
厚生年金法
国民年金法と一緒に勉強すると仕組みを理解しやすいのが特徴的な科目です。
また、国民年金法は複雑な知識が必要になる問題も出題されますが、厚生年金法は単純な問題が多いので、一度知識を身に付ければ安定した得点源になる科目です。
健康保険法
後ほど紹介する「労働者災害補償保険法」と関連性のある科目ですので、リンクして覚えると理解を深めやすいです。
怪我や病気になった時に病院・クリニックで受診・治療をして支払いをすると思います。
全額負担をすると大きな金額になるので、一部医療費を補助しますよ、という目的の法律です。
健康保険料、会社と労働者の支払い利率、高額医療、傷病手当などの問題が出題されます。
ほとんどの人が密接に関わりのある科目ですので、知識として覚えておくと良いと思います。
労働者災害補償保険法
健康保険法は労働以外の怪我・病気に医療費補助に関する法律ですが、
労働者災害補償保険法は労働者の怪我・病気になった場合の補償に関する法律です。
労働中の労災、通勤災害、保険料、支払い・・・などの問題が出題されます。実際に社会人として働いている場合でも補償を受けたことが無い人は多いので、イメージしにくいかもしれないのですが、問題自体はそれほど難しくないので、勉強が苦手な方でもコツコツ勉強すれば合格レベルに達することができます。
雇用保険法
労働者が失業した時の保障に関する法律です。
再就職するまでに一定の生活水準を保つための手当に関すること、育児・介護保険の支給、手続き方法、受給資格などが出題されます。
まずはインプットで基礎知識を理解して、その後は過去問を繰り返し解けば十分に対応することができます。
社会保険に関する一般常識
「労務管理その他の労働に関する一般常識」と比べると難易度は2~3段階低い科目です。
出題範囲もある程度限定されていますので、短期間で対策することが可能ですので、ノー勉はダメですが、後回しにしても戦略上OKです。
100%の確実な知識が無くても、60%くらい分かっていれば解ける問題も多いのが特徴的になります。
労働保健の保険料の徴収等に関する法律
試験範囲が狭き、難易度が低いので満点を狙いたい科目です。
社会保険労務士試験の科目の中では断トツに難易度が低く、「簡単に攻略できた」という口コミもたくさんあります。
主に労働保険徴収法に関する問題が出題されます。
社労士の合格基準点
※2018年度試験の場合
【合格基準】
⓵選択式試験は、総得点23点以上かつ各科目3点以上(ただし、社会保険に関する一般常識及び国民年金法は2点以上)である者
⓶択一式試験は、総得点45点以上かつ各科目4点以上である者
※上記合格基準は、試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したものである。
社労士の配点基準
※2018年度試験の場合
【配点】
⓵選択式試験は、各問1点とし、1科目5点満点、合計40点満点とする。
⓶択一式試験は、各問1点とし、1科目10点満点、合計70点満点とする。
受験者・合格者・合格率推移
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 38,427人 | 2,413人 | 6.3% |
2017年 | 38,685人 | 2,613人 | 6.8% |
2016年 | 39,972人 | 1,770人 | 4.4% |
2015年 | 40,712人 | 1,051人 | 2.6% |
2014年 | 44,546人 | 4,156人 | 9.3% |
2013年 | 49,292人 | 2,666人 | 5.4% |
2012年 | 51,960人 | 3,650人 | 7.0% |
2011年 | 53,392人 | 3,855人 | 7.2% |
2010年 | 55,445人 | 4,790人 | 8.6% |
2009年 | 52,983人 | 4,019人 | 7.6% |
2015年には合格率2.6%と受験生を震えさせた年度もありましたが、基本的には6%~8%程度の合格率で推移しています。
15人受験して1人程度しか合格することができないことを考えると資格取得は狭き門と言えるでしょう。
近年は受験者が減少傾向にありますが、合格率が極端に高くなることは予想できません。難易度は一定水準を保つと思われます。