日商簿記1級の勉強時間~科目別難易度で検証
日商簿記1級は「税理士」、「公認会計士」など上級試験へステップアップしやすい試験内容になるので、会計資格の登竜門の位置づけになります。日商簿記2級に比べると数倍以上は高い難易度ですので、2級取得者でもなかなか合格にたどり着けない人は多いです。
今回は日商簿記1級試験に合格するために必要な勉強時間を徹底検証していきたいと思います。
商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の科目別難易度・勉強時間ランキングも紹介していますので、参考にして頂ければと思います。
日商簿記1級の平均勉強時間/期間目安
4つの学習環境のパーターンで合格までの平均勉強時間を算出してみました。
学習する環境によって必要な学習時間及び期間は異なりますので、どれを選ぶか?を入念に検討してみるといいでしょう。
簿記2級取得者+予備校
最短150時間~300時間/1ヶ月~2ヶ月
標準400時間~500時間/3ヶ月~6ヶ月
最速クラスですと1ヶ月間の勉強で合格することも可能です。
既に簿記2級程度の知識がある方であれば独学で合格することも可能ですが、短期合格を目指しているのであれば予備校が有利ですね。
無駄な勉強をしないで、必要な箇所だけ学習することができるので、予備校のノウハウを利用するのはメリットがあります。
簿記初心者+予備校
最短300時間~400時間/2ヶ月~3ヶ月
標準500時間~600時間/5ヶ月~8ヶ月
全くの簿記初心者でも半年くらいシッカリと勉強すれば合格することは可能です。
予備校の講座は「初心者向けコース」、「学習経験者向けコース」に分かれているケースが多いので、初心者向けコースで分かりやすいと思う学校に入会すると良いでしょう。
簿記2級取得者+独学
最短200時間~300時間/1ヶ月~2ヶ月
標準600時間~800時間/6ヶ月~12ヶ月
独学で効率的に学習することができるのであれば必ずしも予備校を利用する必要はありません。
優秀な方の場合ですと、むしろ独学の方が効率的に勉強することができるでしょう。
一般的な頭脳の方でも努力をすれば自力で合格することは可能ですが、半年は頑張る覚悟を持って臨みましょう。
簿記初心者+独学
最短400~500時間/6ヶ月
標準800時間~1,000時間/12ヶ月~18ヶ月
4つのパターンの中で最も過酷な道のりになると予想されるのが「簿記初心者+独学」パターンです。
日商簿記1級試験は高度な会計知識も必要になりますので、初心者には理解するのが難しい問題が多く出題されていますので、ハッキリ言っておすすめできません。合格までに必要な勉強期間としては1年以上は覚悟しておきましょう。
日商簿記1級~科目別の難易度・勉強時間ランキング
※難易度ランクはS~Dに分類にしています。
※S=凄く難しい、A=難しい、B=普通、C=易しい、D=凄く易しい
順位 | 科目 | 配点 | 勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|---|
1位 | 商業簿記 | 25点 | 250時間 | A |
2位 | 会計学 | 25点 | 250時間 | B |
3位 | 工業簿記 | 25点 | 150時間 | B |
4位 | 原価計算 | 25点 | 150時間 | B |
合計 | - | 100点 | 800時間 | B(偏差値56) |
日商簿記1級試験の難しいところは、捨て科目を作ることができない点です。
他の資格試験であれば1科目全く出来なくても、他の科目で挽回できるケースは多いのですが、日商簿記1級試験は1科目でも得点の40%未満になるとその時点で不合格になってしまうので、バランスよく学習することが重要になります。
各科目共に難易度はほとんど同じくらいです。既に日商簿記2級を取得されている方であればスムーズに学習を進めやすいのですが、全くの初心者からですと商業簿記・会計学は難しく感じるかもしれません。それに比べると工業簿記・原価計算は出題範囲が狭く、易しい問題が多い傾向があります。トータル的な難易度としては偏差値56のBランク判定と格付けさせて頂きました。
行政書士、社会保険労務士、二級建築士、マンション管理士などと同等程度の難易度になります。
合格基準点(ボーダーライン)
- 70%以上(各科目合計70点以上)
- 1科目ごとの得点は40%以上(1科目10点以上)
日商簿記1級が難しいと言われている理由の1つが合格基準にあります。
1科目でも苦手科目を作ってしまい、10点未満を取ると不合格になってしまいます。
例えば商業簿記20点、会計学25点、工業簿記25点、原価計算9点の場合ですと合計得点が79点ですので、70%以上の条件を満たしていますが、原価計算の科目が40%以上(10点以上)の条件を満たしていないので不合格になります。
トータル的なバランス力が問われる試験ですので、得意科目を作る以上に苦手科目を作らないことが日商簿記1級試験に合格する上で重要になります。
商業簿記
仕訳・計算が中心になります。
曖昧な知識では問題を解くことが難しいのが特徴的になります。
暗記だけでは対応することはできず、理解度が重要で、基礎知識に加えて応用力が重要になります。
浅い勉強ではなく、1つ一つの重要箇所を深く掘り下げて実務的な知識を身に着けることがポイントになります。
日商簿記1級試験の中では最も難易度の高い科目と言えるでしょう。既に簿記2級試験に合格されている方でも難しいと感じますので、簿記初心者は躓きやすいので注意が必要になります。独学で勉強されている方は分からないと感じたのであればすぐに予備校に切り替えることをおすすめします。
会計学
計算力を問われる問題は少なく、理論問題が中心なのが特徴的になります。
商業簿記科目と似ていて、出題範囲もほとんど一緒ですので、同時進行で勉強するのが基本になります。
暗記だけで解ける問題もありますが、高得点を取るには確実な理解が必要になります。回答については「なぜ」を説明できるレベルに達することがポイントになります。
工業簿記
単純総合原価計算、本社工場会計、標準原価計算(配合差異・歩留差異)、工程別組別総合原価計算、標準原価計算(修正パーシャルプラン)、工程別標準原価計算、実際組別総合原価計算、工程別組別総合原価計算、工程別標準原価計算、直接原価計算と全部原価計算、標準原価計算(シングルプラン)、標準原価計算(修正パーシャルプラン)などが出題範囲になります。
日商簿記2級合格者であれば短時間で対策可能です。商業簿記に比べると出題範囲が的を絞れるので、勉強時間は少ないのが特徴的になります。勘定記入など基礎知識として抑えるところはシッカリと抑えて、過去も繰り返し解くことが対策としては有効です。
長文の問題が多いので、読解力に自信が無い方はシッカリと読み込む力を身に着けておくことも重要になります。
原価計算
品質原価計算、CVP分析・事業部の業績測定、設備投資の意思決定、直接標準原価計算、直接原価計算、CVP分析・業務的意思決定、設備投資の意思決定(取替投資)、業務的意思決定、設備投資、CVP分析と予算実績差異分析、設備投資、CVP分析と予算実績差異分析・ABC、連産品の原価計算、意思決定会計、総合原価計算・セールスミックスなどが試験範囲になります。
4科目の中では一番難易度が低いので後回しにされる受験生が多いのですが、油断は禁物です。
日商簿記1級の受験者・合格者・合格率推移
実施年月 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2019.6.9 | 6,788人 | 575人 | 8.5% |
2018.11.18 | 7,588人 | 680人 | 9.0% |
2018.6.10 | 7,501人 | 1,007人 | 13.4% |
2017.11.19 | 8,286人 | 487人 | 5.9% |
2017.6.11 | 7,103人 | 626人 | 8.8% |
2016.11.20 | 8,416人 | 783人 | 9.3% |
2016.6.12 | 7,792人 | 846人 | 10.9% |
2015.11.15 | 9,087人 | 873人 | 9.6% |
2015.6.14 | 8,108人 | 716人 | 8.8% |
2014.11.16 | 9,931人 | 877人 | 8.8% |
過去の実施試験の合格率を見ると8%~10%程度で推移しているのが特徴的になります。
10人に1人も合格できないことを考えると易しい試験ではないことが分かります。受験者数については若干減少傾向にありますが、合格率・難易度自体は一定水準が維持されるものと予想されます。