中小企業診断士合格に必要な勉強時間
中小企業診断士ってどのくらいの難易度なの?合格までにどのくらいの勉強時間が必要なの?合格率は?など試験レベルについての疑問を持っている方は結構多いと思います。
このページでは中小企業診断士の難易度・偏差値の総合的な判定及び合格するための勉強テクニックについて解説していきたいと思います。
まずは目安になる勉強時間・勉強期間をご覧くださいませ。
一次試験の最短・平均勉強時間/期間目安
中小企業診断士試験の科目に関連する資格、業務の従事されている方の場合と全くの初心者の場合で勉強時間は多少異なります。
例えば公認会計士の資格があれば財務・会計科目、経済学・経済政策科目の2科目免除が可能ですので、合格までの学習期間を短縮することが可能です。
予備校
最短300時間3ヶ月
平均1,000時間8ヶ月~12ヶ月
科目免除が複数あれば1ヶ月~2ヶ月程度で合格することも可能です。
7科目を受験すると考えると最速クラスでも300~400時間、3ヶ月程度の期間は必要になります。
標準的なスピードで考えると1,000時間が合格までの1つの目安とされています。期間は約1年程度ですね。
試験勉強開始までの学習レベル、実務経験などによっても必要になる学習時間は変動します。
独学
最短500時間4ヶ月~6ヶ月
平均1,200時間12ヶ月~18ヶ月
独学でも合格することは可能です。但し、最近ではオンライン講座の登場で「独学の費用が安い」というメリットが無くなってきています。
というのも独学の場合でもテキスト・過去問購入、模試試験受験料などで合格までに3万円~4万円程度の費用が掛かります。
オンラインの通信講座を受講した場合でも5万円~6万円くらいのコースは結構ありますので、実質2万円~3万円くらいしか差が無いのです。
効率性を考慮すると料金面で予備校を断念されている方も検討対象に加えておいた方がいいでしょう。
二次試験の最短・平均勉強時間/期間目安
まずは一次試験合格することだけを考えている受験生が多いので、ストレートで一次・二次試験に合格する人は意外と少ないです。
但し、短期集中の勉強で合格を狙うことができますので、一次試験終了まで二次試験対策は全くしていない方でも諦める必要はありません。
二次試験は一次試験終了後からでも十分に間に合いますので、来年に合格を持ち越す必要はありません。
予備校
最短100時間1ヶ月
平均250時間2ヶ月~2ヶ月半
早い方ですと100時間程度で合格レベルに達することが可能です。
一般的には250時間程度必要とされています。社会人で働きながら勉強されている方の場合ですと1次試験終了後すぐに取り掛からないと間に合いません。合格発表後に合格が確定しないとモチベーションが上がらない人もいると思いますが、できる限り早くスタートすることをおすすめします。
独学
最短150時間1ヶ月半
平均350時間3ヶ月~4ヶ月
受験専念組に関して言えば2ヶ月程度で対策可能ですが、社会人組に関しては二次試験だけでも予備校を利用することをおすすめします。
独学と予備校では効率性が全然違いますので、短期合格を目指すのであれば検討してみてください。
一次試験科目別の難易度・勉強時間ランキング
※難易度ランクはS~Dに分類にしています。
※S=凄く難しい、A=難しい、B=普通、C=易しい、D=凄く易しい
※勉強時間+難易度=ランキング順位
順位 | 科目 | 配点 | 勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|---|
1位 | 財務・会計 | 100点 | 200時間 | A |
2位 | 経済学・経済政策 | 100点 | 200時間 | A |
3位 | 運営管理 | 100点 | 200時間 | C |
4位 | 企業経営理論 | 100点 | 120時間 | B |
5位 | 経営法務 | 100点 | 120時間 | B |
6位 | 経営情報システム | 100点 | 100時間 | B |
7位 | 中小企業経営・政策 | 100点 | 80時間 | D |
合計 | - | 700点 | 約1,000時間 | B |
中小企業診断士試験は科目免除制度があり、例えば公認会計士や税理士資格があると財務・会計科目免除、司法試験合格者であれば経営法務科目免除が可能になります。
但し、条件を満たしている場合においても必ずしも科目免除をした方が有利になるとは言えません。中小企業診断士試験の一次試験合格基準は総得点の60%以上になりますので、高得点を狙える実力がある方の中には総得点を上げるためにあえて免除申請されないケースもあります。
もちろん、合格後に期間が空いていて自信が無い場合、勉強しなければ合格点にたどり着けない場合については申請した方が無難でしょう。
一次試験合格基準点
⓵第1次試験の合格基準は、総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とする。
⓶科目合格基準は、満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とする。
財務・会計
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 12,033人 | 876人 | 7.3% |
2017年 | 11,573人 | 2,969人 | 25.7% |
2016年 | 10,753人 | 2,320人 | 21.6% |
出題範囲
- 簿記の基礎
- 企業会計の基礎
- 原価計算
- 経営分析
- 利益と資金の管理
- キャッシュフロー
- 資金調達と配当政策
- 投資決定
- 証券投資論
- 企業価値
- デリバティブとリスク管理
目標点
60点/100点
勉強法・学習のポイント
日商簿記1級又は日商簿記2級レベルの知識があれば簡単な科目です。
しかし、全くの初心者の場合ですと中小企業診断士一次試験科目の中では最難関と言われている分野になります。
但し、企業の経営分析・アドバイス等のコンサルティング業務を行う際には非常に重要な内容になりますので、仕事に役立つ知識を身に着けることができます。経理業務をされていない方の場合ですと簿記・原価計算などは馴染みが無いと思いますが、経営分析するためには必須の知識になります。
財務・会計は二次試験にも大きく関連しますので、シッカリと基礎知識を付けて、正しい理解をすることが重要になります。
何となく分かるレベルではダメなので、問題の回答について説明できるレベルの知識が求められます。
勉強のポイントとしては付かれている時やスキマ時間ではなく、ゆっくりと考えられる環境の時に学習したい科目になります。
経済学・経済政策
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 11,548人 | 3,048人 | 26.4% |
2017年 | 11,770人 | 2,756人 | 23.4% |
2016年 | 12,266人 | 3,636人 | 29.6% |
出題範囲
- 国民経済計算の基本的概念
- 主要経済指標の読み方
- 財政政策と金融政策
- 国際収支と為替相場
- 主要経済理論
- 市場メカニズム
- 市場と組織の経済学
- 消費者行動と需要曲線
- 企業行動と供給曲線
- 産業組織と競争促進
目標点
65点/100点
勉強法・学習のポイント
マクロ経済学、ミクロ経済学、経済指標を中心とする学習になります。
国、企業、個人の経済動向をする上で必要不可欠な知識になりますので、非常にビジネスシーンにおいても役立ちます。
経済学に詳しくなると日本経済新聞(日経)を読むのが楽しくなるはずです。経済情報を読み取る力が格段にアップするはずです。
経済学部出身者であれば馴染みのある科目なのでスムーズに学習を進めることが可能ですが、全くの初心者の場合ですと出てくる単語の意味が分からず、単語を調べるところからスタートされている受験生も多いので苦戦すると思います。
1つ一つの意味をシッカリと理解をして、問題を解くことを心がけましょう。
運営管理
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 13,912人 | 3,596人 | 25.8% |
2017年 | 13,207人 | 410人 | 3.1% |
2016年 | 11,865人 | 1,395人 | 11.8% |
出題範囲
- 生産管理概論
- 生産のプランニング
- 生産のオペレーション
- 店舗・商業集積
- 商品仕入・販売(マーチャンダイジング)
- 商品補充・物流
- 流通情報システム
目標点
70点/100点
勉強法・学習のポイント
二次試験の「事例Ⅱ(マーケティング・流通)」及び「事例Ⅲ(生産・技術)」と関連性の高い科目ですので、一次試験の段階で基礎知識を身に着けて、応用問題にも対応できるレベルまで勉強しておきましょう。
主に生産管理、店舗管理、各種情報システムの3分野が核になります。難しい、簡単など難易度については賛否両論ですが、シッカリと勉強すれば誰でも攻略できるはずです。
「PDPC法」、「系統図法」、「マトリックス図法」、「連関図法」など単語を詳しく理解するのが問題を解く上でのポイントです。
企業経営理論
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 13,037人 | 927人 | 7.1% |
2017年 | 12,108人 | 1,091人 | 9.0% |
2016年 | 12,659人 | 3,746人 | 29.6% |
出題範囲
- 経営計画・管理
- 企業戦略
- 成長戦略
- 経営資源戦略
- 競争戦略
- 技術経営
- 国際経営
- 経営組織の形態と構造
- 経営組織の運営
- 人的資源管理
- マーケティング計画と市場調査
- 消費者行動
- 製品計画
- 価格計画
- 流通チャネルと物流
- プロモーション
目標点
70点/100点
勉強法・学習のポイント
経営戦略をする上で重要になる科目です。二次試験の「事例Ⅱ(マーケティング・流通)」と「事例Ⅲ(生産・技術)」に関連しています。
一連の流れを紐づけて理解することが重要です。勉強していて楽しいと感じる受験生が多いので、モチベーションを持続させやすいのも特徴的になります。
経営法務
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 14,269人 | 713人 | 5.1% |
2017年 | 14,269人 | 1,192人 | 8.4% |
2016年 | 13,259人 | 839人 | 6.3% |
出題範囲
- 事業開始、会社設立及び倒産等に関する知識
- 知的財産権に関する知識
- 取引関係に関する法務知識
- 企業活動に関する法律知識
- 資本市場へのアクセスと手続
目標点
60点/100点
勉強法・学習のポイント
企業経営の関連する法律・コンプライアンスについて出題される科目です。
二次試験と関連性が薄いので、戦略上、極力勉強時間を抑えたい科目ではあります。6割程度の得点を取れればOKです。
民法、会社法、金融商品取引法、倒産法、知的財産権など法律初心者にとって最初はハードルが高いと思いますが、テキストで基礎知識をインプットして、過去問を繰り返し解いてアウトプットすれば徐々に得点アップするはずです。
暗記ではなく、理解が必要になります。
経営情報システム
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 11,498人 | 2,628人 | 22.9% |
2017年 | 13,725人 | 3,646人 | 26.6% |
2016年 | 13,385人 | 1,143人 | 8.5% |
出題範囲
- 情報処理の基礎技術
- データベースとファイル
- 通信ネットワーク
- システム性能
- 経営戦略と情報システム
- 情報システムの開発
- 情報システムの運用管理
- 情報システムの評価
- 外部情報システム資源の活用
- 情報システムと意思決定
目標点
70点/100点
勉強法・学習のポイント
プログラミング知識があればスムーズに勉強を進めやすいと思いますが、
パソコン、スマホ操作が苦手な方は苦戦する科目になります。
バブル世代の50代、60代で苦手科目とされている受験生は多いですね。
現在の企業の業務効率をアップさせるためにはIT化は欠かせません。IT用語の基本的な理解、実務として活用できるレベルの応用的な知識の両方が求められます。二次試験とも関連する科目ですので、それを見据えた学習をするのがポイントになります。
中小企業経営・政策
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 13,449人 | 3,090人 | 23.0% |
2017年 | 13,791人 | 1,509人 | 10.9% |
2016年 | 12,283人 | 1,539人 | 12.5% |
出題範囲
- 経済・産業における中小企業の役割、位置づけ
- 中小企業の経営特性と経営課題
- 中小企業に関する法規と政策
- 中小企業政策の役割と変遷
目標点
60点/100点
勉強法・学習のポイント
一次試験科目の中では断トツで難易度の低い科目です。二次試験との関連性もほとんどないので、短期合格を目指している方は極力、勉強時間は100時間未満に抑えて、他の科目へ注力したいところです。
試験範囲も狭いですし、暗記で対応できる問題が多いのが特徴的になります。
一次試験の受験者数・合格者数・合格率推移
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 16,434人 | 3,236人 | 21.7% |
2017年 | 14,343人 | 3,106人 | 21.7% |
2016年 | 13,605人 | 2,404人 | 17.7% |
2015年 | 13,186人 | 3,426人 | 26.0% |
2014年 | 13,805人 | 3,207人 | 23.2% |
2013年 | 14,252人 | 3,094人 | 21.7% |
一次試験全体での合格率は例年20%前後になりますので、5人受けて1人一次試験を突破できるイメージです。
合格率を考えるとそれほど高く感じないかもしれないのですが、受験生の偏差値レベルは結構高いので、5人受けて4人落ちると考えると難易度は高いと言えます。実際に中小企業診断士の合格者のほとんどは7割以上の勉強時間を一次試験に注ぎ込んでいます。
半端な気持ちでは到底合格することはできないので、覚悟して臨む必要があることは明白です。
二次試験の科目別難易度・勉強時間ランキング
順位 | 科目 | 配点 | 勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|---|
1位 | 事例Ⅰ(組織・人事) | 100点 | 75時間 | A |
2位 | 事例Ⅲ(生産・技術) | 100点 | 75時間 | A |
3位 | 事例Ⅳ(財務・会計) | 100点 | 50時間 | A |
4位 | 事例Ⅱ(マーケティング・流通) | 100点 | 50時間 | B |
合計 | - | 400点 | 250時間 | A |
一次試験終了から二次試験当日までは約2ヶ月半の期間があります。一次試験合格の自信があるのであれば合格発表を待たずにすぐに二次試験対策をスタートさせることをおすすめします。
財務会計、企業経営理論、運営管理、経営情報システムなど二次試験と関連性の深い科目が得意な方であれば少ない勉強時間でも可能ですが、苦手の場合ですと応用知識が問われる問題が出題されますので、結構時間が掛かってしまいます。
一次試験の学習の時点で二次試験を見据えておきたいところです。
また、二次試験対策は一次終了後からでも対応可能ですが、仕事で忙しい方はそれだと不利になってしまいますので、ストレート合格を狙うのであれば一次・二次対策を平行させて学習することをおすすめします。
二次試験合格基準点
筆記試験における総点数の60%以上でかつ1科目でも40%未満のものがない者であって、口述試験における評定が60%以上のものとする。
事例Ⅰ(組織・人事)の過去出題内容
【2018年度】
業種:エレクトロニクス・メーカー
設問:競争戦略、強みを強化する事業展開、事業特性、組織改編、チャレンジ精神や独創性を維持するための取り組み
【2017年度】
業種:菓子製造業
設問:成長要因、組織構造、組織管理、戦略、経営資源、人材の採用・育成
事例Ⅱ(マーケティング・流通)の過去の出題内容
【2018年度】
業種:旅館
設問:強み、競合の状況、購買履歴を活用した販売拡大策、顧客生涯価値向上の施策、新規顧客層獲得策
【2017年度】
業種:寝具小売業
設問:強み、競合の状況、購買履歴を活用した販売拡大策、顧客生涯価値向上の施策、新規顧客層獲得策
事例Ⅲ(生産・技術)の過去出題内容
【2018年度】
業種:プラスチック射出成型加工業
設問:業績を維持してきた理由、作業方法の問題点と改善策、生産計画上の問題点と改善策、生産管理のコンピュータ化、付加価値向上につながる新たな戦略
【2017年度】
業種:金属部品の加工メーカー
設問:生産管理上の課題と対応策、ホームページの活用方法、潜在顧客獲得のための社内対応策、製品やサービスの開発
事例Ⅳ(財務・会計)の過去出題内容
【2018年度】
業種:倉庫・輸送・不動産関連のサービス業
設問:経営分析、加重平均資本コスト、正味キャッシュフロー、企業価値、感度分析、営業拠点を開設することによる経営への影響、業務委託を行う際の留意点
【2017年度】
業種:染色関連事業
設問:経営分析、予想損益計算書、予想営業利益、設備投資の経済性計算、子会社化による経営への影響
二次試験の受験者数・合格者数・合格率推移
年度 | 受験者数 | 合格者数(筆記) | 合格者数(口述) | 合格率 |
---|---|---|---|---|
2018年 | 4,978人 | 906人 | 905人 | 18.2% |
2017年 | 4,279人 | 830人 | 828人 | 19.4% |
2016年 | 4,394人 | 842人 | 842人 | 19.2% |
2015年 | 4,941人 | 944人 | 944人 | 19.1% |
2014年 | 4,885人 | 1,190人 | 1,185人 | 24.3% |
2013年 | 4,907人 | 915人 | 910人 | 18.5% |
二次試験も概ね20%前後の合格率になります。暗記だけでは対応できない問題が多いので、読解力・理解力が無い人は苦戦します。
何となく分かるレベルではなく、解答の根拠を説明できる理解力、実務で実際に使えるレベルの知識が各科目で求められます。