FP2級の勉強時間~科目別難易度で検証
ファイナンシャル・プランナーとしてキャリアを積みたい方、就職・転職でPRしたいのであれば最低でもFP2級以上の資格を手に入れておきたいところです。生活設計のプロアドバイザーとして活躍されている方のほとんどはFP2級以上の資格を取得されていますし、企業においても重宝されています。
さて、今回紹介するのはFP2級の勉強時間及び科目別の難易度に関するテーマです。
合格までにどのくらい勉強すればいいの?学科試験・実技試験ってどのくらい難しいの?合格率ってどのくらい?など気になる部分を徹底検証していきたいと思います。
合格者の平均勉強時間/期間目安
受験生は主に「独学組」、「予備校組(通信・通学)」の学習環境に分類されますので、それぞれのパターンにおける合格までに必要な勉強時間を算出してみました。
なお、学習時間の比率は学科試験80%、実技試験20%を目安にすると良いでしょう。
実技試験で難易度の低い科目を選ぶ場合は学科試験90%、実技試験10%の比率でもOKです。
独学
最短:80時間~100時間/1ヶ月~1ヶ月半
標準:180時間~200時間/3ヶ月~4ヶ月
FP2級試験は独学で受験されている方が多い資格です。
平均の合格までの勉強期間としては3ヶ月~4ヶ月程度になります。宅建士試験が半年程度と言われていますので、それに比べると難易度は低いと言えるでしょう。最速クラスであれば独学でも1ヶ月合格も可能です。
予備校
最短:50時間~80時間/2週間~1ヶ月
標準:150時間~160時間/2ヶ月~3ヶ月
問題が難しい、理解できない問題が多い・・・そのような方は少々コストは掛かりますが、予備校を利用するのも1つの手です。
オンライン講座であれば数万円程度のコースで受講することができますので、実質的な負担金額が独学とそれほど差が無いので予算が少ない方も検討対象に加えておくことをおすすめします。
独学に比べると学習を無駄を省いて、効率的に勉強を進めることができますので、合格までの勉強時間が少ない傾向があります。
最小限の努力で合格されたい方は予備校の方が向いているでしょう。
学科試験科目別の難易度・勉強時間ランキング
※難易度ランクはS~Dに分類にしています。
※S=凄く難しい、A=難しい、B=普通、C=易しい、D=凄く易しい
順位 | 科目 | 勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|
1位 | タックスプランニング | 50時間 | B |
2位 | 金融資産運用 | 45時間 | C |
3位 | 相続・事業承継 | 25時間 | C |
4位 | ライフプランニングと資金計画 | 20時間 | C |
5位 | 不動産 | 20時間 | C |
6位 | リスク管理 | 20時間 | C |
合計 | - | 180時間 | 偏差値50(Cランク) |
タックスプランニング
※FP3級の出題範囲には無い、追加分野。
- わが国の税制
- 所得税の仕組み
- 各種所得の内容
- 損益通算
- 所得控除
- 税額控除
- 所得税の申告と納付
- 個人住民税
- 個人事業税
- ※法人税
- ※法人住民税
- ※法人事業税
- ※消費税
- ※会社、役員間および会社間の税務
- ※決算書と法人税申告書
- ※諸外国の税制度
- タックスプランニングの最新の動向
FP2級試験の最難関科目です。FP3級試験の出題範囲と比較すると大幅に追加されていますので、勉強時間が掛かります。
追加科目以外においても難易度が若干上がっていますので、FP3級試験合格者も復習をシッカリしておくことをおすすめします。
ポイントになるのおは法人関連の税金になります。会社経営をしていない方の場合ですと馴染みが無いと思いますので、頭に入りやすい分野です。苦手科目にしないように最初に取り組みたい科目です。
税理士、簿記などの試験と関連性のある科目です。
金融資産運用
- マーケット環境の理解
- 預貯金・金融類似商品等
- 投資信託
- 債券投資
- 株式投資
- 外貨建商品
- 保険商品
- 金融派生商品
- ポートフォリオ運用
- 金融商品と税金
- セーフティネット
- 関連法規
- 金融資産運用の最新の動向
資産運用に関するアドバイスができるレベルの知識が求められます。
理解するのが難しい問題は少ないのですが、日本円の貯金・預金の経験しか無い人にとっては最初は理解しにくい部分もあると思います。
テキストを読んで、過去問を繰り返し解けばスピーディーに攻略することができます。証券アナリスト、証券外務員試験と関連性のある科目です。
相続・事業承継
※FP3級の出題範囲には無い、追加分野。
- 贈与と法律
- 贈与と税金
- 相続と法律
- 相続と税金
- 相続財産の評価(不動産以外)
- 相続財産の評価(不動産)
- 不動産の相続対策
- 相続と保険の活用
- ※事業承継対策
- ※事業と経営
- 相続・事業承継の最新の動向
FP3級試験に比べると事業継承の範囲が広く問われます。
中小企業の後継者不足が悩まされている昨今において相談需要のある分野の1つでもあります。法人向けのコンサルティングをされている方は非常に役立つはずです。税理士、中小企業診断士などの資格と関連性があります。
ライフプランニングと資金計画
※FP3級の出題範囲には無い、追加分野。
- ファイナンシャル・プランニングと倫理
- ファイナンシャル・プランニングと関連法規
- ライフプランニングの考え方・手法
- 社会保険
- 公的年金
- 企業年金・個人年金等
- 年金と税金
- ライフプラン策定上の資金計画
- ※中小法人の資金計画
- ローンとカード
- ライフプランニングと資金計画の最新の動向
中小法人の資金計画が追加されています。難易度は低い分野ですが、出題範囲が広いので要注意です。
社会保険、年金分野においてもより深い知識が求められます。個人へのコンサルティング業務の核となる分野になります。
社会保険労務士試験との関連性があります。
不動産
- 不動産の見方
- 不動産の取引
- 不動産に関する法令上の規制
- 不動産の取得・保有に係る税金
- 不動産の譲渡に係る税金
- 不動産の賃貸
- 不動産の有効活用
- 不動産の証券化
- 不動産の最新の動向
不動産に関する様々な知識が問われる分野になります。
ほとんどの問題が浅く、広くの知識が問われるので、単純に試験に合格したいだけであれば深く理解するよりも数をこなすことを重視することをおすすめします。
宅建士、マンション管理士と関連性のある科目です。
リスク管理
- リスクマネジメント
- 保険制度全般
- 生命保険
- 損害保険
- 第三分野の保険
- リスク管理と保険
- リスク管理の最新の動向
日本人は将来に対して心配性の方が多い国民性があります。
リスクに対する保険が大好きなのです。「リスク管理」の分野においては主に保険に関する基礎知識が求められます。
ファイナンシャル・プランナーへの相談でも「生命保険は加入するべき?」など生活設計において聞かれるケースが多い分野です。
難易度はFP2級試験の中では低いので、勉強時間もそれほど掛からずに合格点にたどり着けます。
実技試験科目別の難易度・勉強時間ランキング
※難易度ランクはS~Dに分類にしています。
※S=凄く難しい、A=難しい、B=普通、C=易しい、D=凄く易しい
順位 | 科目 | 勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|
1位 | 中小事業主 | 50時間 | B |
2位 | 損保顧客 | 30時間 | C |
3位 | 生保顧客 | 30時間 | C |
4位 | 資産設計 | 20時間 | C |
5位 | 個人資産 | 15時間 | D |
中小事業主資産相談業務
きんざい
- 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
ファイナンシャル・プランニング業務に必要とされる倫理観と関連業法との関係を正しく理解したうえで相談に対する回答が行えること - 中小事業主のニーズ及び問題点の把握
中小事業主の属性及び事業体の経営状況、事業主及び事業体の保有する金融資産、不動産等に関する具体的な設例に基づき、資産運用、税務、事業承継、事業経営、M&A、組織再編等に関する相談における問題点と顧客ニーズを把握できること。また、事業主及び事業体のリスクに関する相談における問題点と顧客ニーズを把握できること - 問題の解決策の検討・分析
問題解決に当たって、ファイナンシャル・プランニング業務に必要とされる知識に基づき、相談に対する適切な解決策の分析・検討ができること - 顧客の立場に立った相談
顧客の立場に立ったうえで、最も適切な問題の解決策を数値的な裏付けをもって提示できること
受験者数が他の実技科目に比べると受験者数が少ないので、テキスト・過去問等の対策教材が少ないのが特徴的になります。
中小事業主資産相談業務は一般的な会社員にとってほとんどお馴染みの無い問題内容になります。
経営幹部クラスのコンサルティング業務を検討されている方に役立つ知識になります。税理士、中小企業診断士などと試験範囲が被ります。
ダブルライセンスで活かしやすいというメリットがありますが、試験難易度が高いので合格を基準に選ぶのであれば避けたいところです。
損保顧客資産相談業務
きんざい
- 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえた ファイナンシャル・プランニング
ファイナンシャル・プランニング業務に必要とされる倫理観と関連業法との関係を正しく理解したうえで、相談に対する回答が行えること - 損保顧客のニーズ及び問題点の把握
損保顧客の属性、保有金融資産、加入している保険商品等に関する具体的な設例に基づき、ライフプラン策定、法人の損保加入、相続・贈与、年金プラン策定、税務に関する相談における問題点と顧客ニーズを把握できること - 問題の解決策の検討・分析
問題解決に当たって、損保商品を始めとする保険商品のほか、ファイナンシャル・プランニング業務に必要とされる知識に基づき、相談に対する適切な解決策の分析・検討ができること - 顧客の立場に立った相談
顧客の立場に立ったうえで、数値的な裏付けに基づき、最も適切な損保商品の紹介および問題の解決策の提示ができること
損保は損害保険の略称で水害・台風・地震などの自然災害、自動車事故などを保証する金融商品になります。
火災保険、自動車保険、傷害保険、ペット保険など分野は非常に幅広いです。日本国内における有名な会社として挙げられるのは東京海上日動火災保険、日新火災海上保険、イーデザイン損害保険、損害保険ジャパン日本興亜、セゾン自動車火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、三井ダイレクト損害保険などになります。
損害保険と関連しない仕事をされている方でも知っている会社も多いはずです。
FP3級試験には無い実技試験科目になりますので、難易度が高く感じる人も結構いると思います。シッカリと対策すれば十分に合格点を狙えますが、将来的に損保関連のコンサルティング・アドバイザーをする予定が無いのであれば避けたいところです。
生保顧客資産相談業務
きんざい
- 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえた ファイナンシャル・プランニング
ファイナンシャル・プランニング業務に必要とされる倫理観と関連業法との関係を正しく理解したうえで相談に対する回答が行えること - 生保顧客のニーズ及び問題点の把握
生保顧客の属性、保有金融資産、加入している保険商品等に関する具体的な設例に基づき、金融商品としての生保商品、法人顧客の保険経理、年金プラン策定、相続・贈与、税務等に関する相談における問題点と顧客ニーズを把握できること - 問題の解決策の検討・分析
問題解決に当たって、生保商品を始めとする保険商品のほか、ファイナンシャル・ プランニング業務に必要とされる知識に基づき、相談に対する適切な解決策の分析・検討ができること - 顧客の立場に立った相談
顧客の立場に立ったうえで、数値的な裏付けに基づき、最も適切な生保商品の紹介及び問題の解決策の提示ができること
主に個人の生命保険に関する提案、見直しの知識が問われる実技試験です。
FP3級試験の保険顧客資産相談業務に比べるとより深い知識が問われます。「損保顧客資産相談業務」と似ていますが、難易度は若干下がります。
資産設計提案業務
FP協会
- 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
- ファイナンシャル・プランニングのプロセス
- 顧客のファイナンス状況の分析と評価
- プランの検討・作成と提示
FP協会で受験される場合は「資産設計提案業務」の一択になります。
ファイナンシャル・プランナーの核になる生活設計に関する分野です。難易度は低いので合格を狙いやすいです。
個人資産相談業務
きんざい
- 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
ファイナンシャル・プランニング業務に必要とされる倫理観と関連業法との関係を正しく理解したうえで相談に対する回答が行えること - 個人顧客のニーズ及び問題点の把握
個人顧客の属性、保有金融資産、保有不動産等に関する具体的な設例に基づき、金融資産選択、不動産の有効活用、相続・贈与、ライフプランの策定、年金プランの策定、所得税・住民税等に関する相談における問題点及び顧客ニーズを把握できること - 問題の解決策の検討・分析
問題解決に当たって、ファイナンシャル・プランニング業務に必要とされる知識に基づき、相談に対する適切な解決策の分析・検討ができること - 顧客の立場に立った相談
顧客の立場に立ったうえで最も適切な問題の解決策を数値的な裏付けをもって提示できること
きんざいの実技科目である「個人資産相談業務」、「中小事業主資産相談業務」、「生保顧客資産相談業務」、「損保顧客資産相談業務」の中で最も難易度が低いと考えるのが「個人資産相談業務」です。
金融資産、不動産、年金、税金など幅広い知識が問われますが、学科試験をシッカリ勉強していて、過去問を繰り返し解けば十分に短時間で対応できます。単純に合格したいだけであれば一番おすすめの科目です。
FP2級の合格率推移(日本FP協会)
実施年月 | 学科試験合格率 | 実技試験合格率 |
---|---|---|
2019年5月 | 40.17% | 62.65% |
2019年1月 | 48.26% | 50.31% |
2018年9月 | 39.47% | 50.52% |
2018年5月 | 42.93% | 51.68% |
2018年1月 | 45.63% | 57.45% |
2017年9月 | 47.82% | 58.34% |
2017年5月 | 41.44% | 46.79% |
2017年1月 | 39.43% | 63.87% |
2016年9月 | 40.12% | 50.60% |
2016年5月 | 38.97% | 58.69% |
2016年1月 | 34.76% | 45.89% |
学科試験の合格率が40%前後、実技試験(資産設計提案業務)の合格率が50%前後になります。
FP3級試験に比べると合格率は低い傾向が見られ、それだけ合格するための難易度は高いと言えるでしょう。
年度によって合格率にバラつきがありますが、難易度は一定基準を保っています。
FP2級の合格率推移(きんざい)
実施年月 | 学科試験 | 実技(個人) | 実技(中小) | 実技(生保) | 実技(損保) |
---|---|---|---|---|---|
2019年5月 | 20.88% | 25.77% | - | 54.73% | - |
2019年1月 | 31.11% | 36.93% | 33.98% | 40.06% | 50.00% |
2018年9月 | 21.45% | 20.47% | 41.97% | 37.42% | 54.61% |
2018年5月 | 28.24% | 23.87% | - | 45.47% | - |
2018年1月 | 28.53% | 31.72% | 47.56% | 50.20% | - |
2017年9月 | 30.21% | 51.29% | 49.95% | 37.48% | 72.35% |
2017年5月 | 24.85% | 34.12% | - | 41.96% | - |
2017年1月 | 23.13% | 38.90% | 49.12% | 44.03% | - |
2016年9月 | 23.82% | 60.44% | 39.06% | 44.39% | 60.51% |
2016年5月 | 21.85% | 17.82% | - | 38.90% | - |
2016年1月 | 20.18% | 20.40% | 32.41% | 39.47% | - |
きんざいの学科試験の合格率は20%~30%と非常に低い数値になっています。
合格率だけを見るとFP協会より、きんざいの方が合格が難しいと感じますが、シッカリと勉強している受験生数が少ないので、若干きんざいの方が難しいと言われていますが、それほど難易度は変わりません。
実技試験の合格率は試験実施月によってバラバラですが、概ね50%前後になります。